動物は痛くない?痛みを感じない?ってホント?
いえ、そんなことはありません。動物も痛みを感じます。一般的に人間より痛みを感じにくいことは事実です。しかし、例えば癌などに対してはかなり痛みを感じる時があります。それほど典型的ではないにしても、ある種の痛みを伴う手術に対しては、術後鎮静剤等を使用しないと合伴症の可能性が高くなったり、予後が悪くなったり、最悪の場合死亡したりする可能性もあります。
従来の獣医学ではあまり論じられることがなかったのですが、最近この問題がクローズアップされてきました。その理由の1つとして、副作用の少ない鎮静剤を使用できるようになったことが挙げられます。
当院でも、神経質で非常に怖がっている動物には一時的に精神安定剤を投与したり、苦痛を感じていると判断された動物に対しては積極的に鎮静剤の投与を行っています。なぜなら動物の苦痛を救うことが獣医師に課せられた重要な使命だからです。
近年、小動物臨床においては、疼痛の管理の重要性がより再確認されている。今回はそのむずかしそうな疼痛の管理を出来るだけ優しく(易しく)解りやすく解説を 試みました。小動物臨床においては、70年代は疼痛管理の記載は皆無で、80年代から少しずつ体系づけられ、90年代において応用されはじめ、2000年 代においては、疼痛管理はほぼ常識化されて来たようです。
それゆえに現在、動物病院にて診察をしている獣医師にとって、疼痛管理は避けられない事項である。今後は動物に少しでも苦痛を強いないようにすれば、動物 の遺伝子はそれを覚えていて、代々生まれ変わるごとに、より人間と共生できる動物になりうると私は信じています。
また動物病院のマネージメントの観点から言えば、今後は飼い主が鎮痛剤を使用しているのがわかるように、計算書の項目の、注射を一括にするのはなく、麻酔 薬のように、別に鎮痛剤・鎮静剤の項目をあらたに付け加えると良いであろう。
今回の解説は、論理や原理については、殆ど省いてありますので、いろいろな成書を参考にしてください。今回は小動物臨床を行う臨床家が忙しいなかで、一目 でわかる犬猫の疼痛管理のその易しい臨床応用をいかに行うかに重点を置いて解説しまいます。最近において塩酸ケタミンが麻薬指定となることが論議を呼んで いますが、論議はさておき今回はケタミンを含めた犬猫の疼痛管理について、勉強する良い機会として捉え自身の動物病院にての疼痛管理をより一歩進めて、よ り良い小動物臨床を提供できる環境を整えることが先決と思われる。
ある意味において、疼痛管理は麻薬の許可を得ていないと、できにくいものである。ケタミンを麻酔薬としてのみ使用するのではなく、塩酸モルヒネ等の使用の ために動物の疼痛管理には麻薬が必要となるので、許可は臨床獣医師にとってより良い診療のためには不可欠と考えて良いであろう。
私達の臨床獣医師は最終的な治療目的は、動物の痛みを取り除く事である。たとえその病気が治療できなくても、痛みだけは動物から除くことを心がける必要が あろう。多くの飼い主は自身の動物の痛みには敏感であり、最低限、痛みだけは取り除いて欲しいと望むものである。獣医師はそのために理論武装して、実際に 行う必要がある。
痛みは死そのものより恐ろしいと言われ、我々獣医師は動物の痛みを克服すべき使命を課されているものと考えるべきである。私達の動物病院では、待合室に 「疼痛拒否宣言」を提示しています。
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