心臓系(循環器系)
基本は心臓の触診と聴診・頚静脈拍動と脈診の4つが身体検査の基本です。例えば「咳」をする犬に、まず腹部からの圧迫等の影響を考えながら、始めに
・気管(発咳テストと聴診)
・気管支(打診と聴診)
・肺胞(打診と聴診)
・心臓(触診と聴診)
を系統的に調べます。また頚静脈拍動で拍動の有無と程度をしらべます。すると「咳」の原因が、心臓由来?心臓以外?(気管・気管支・肺胞由来?)であるかが、だいたい判ります。ただ単に「咳」をする動物にどんな咳ですか?くらいの質問では不十分です。
・頚静脈拍動
右心拡大
縦隔洞腫大
心嚢滲出
肺性心
これらの合理的な身体検査法を学ぶと、例えば腹水のある削痩した高齢犬で、頚静脈拍動が認められなければ(心臓由来ではないから)この腹水の原因は肝臓由来(たとえば肝臓の腫瘍等)がたちどころに強く疑え、腹水の分析の重要性が増すことになるのです。
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皮膚系(体表系)
まずは皮膚病の病歴の聴取と身体検査の基本、例えば皮膚の掻き取り検査・ウッドランプ・真菌検査・生検等の手順を覚えます。そして皮膚病変の分類を学びます。これを知らないとカルテに皮膚の異常の状態を正しく書けません。すなわち原発性皮膚病変(小斑・大斑・丘診・結節・小水泡・水泡・膿胞・膨疹・鱗屑)、二次性皮膚病変(鱗屑・痂皮・糜爛・潰瘍・擦傷・裂溝・苔癬化・色素沈着・過角化・面皰・上皮小環)の各病変です。
次に病変の分布(左右対称性等)と病変の形態(輪状・線状・群状)の確認をします。
実際の症例はまず掻痒へのアプローチ(外部寄生虫・細菌感染・真菌性・アレルギー性の手順で疑う)、そして抗生物質療法(種類・投与量・期間)、ステロイド療法、薬浴療法等の基礎的な診断と治療が出来ることです。
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神経系(脳脊髄系)
まずは脳神経系(前脳・前庭・小脳)と脊髄系(4つの領域に分類)の神経学的検査の意義とその方法を学びます。これで病変の位置を推定し(原因はまだ)鑑別診断リストを作成します。正常を知らずして異常は判りません。またUMNとLMNの違い等も学びます。そして神経学的疾患のアプローチである、以下の手順を学びます。
1)特徴(種類・性別・年齢)
2)主訴
3)病歴の聴取(急性・進行性)
4)身体検査(全身性疾患は?)
5)問題点リスト
6)神経学的検査
7)原因の可能性リスト
8)診断プラン(MDB)
9)診断プラン(補助検査)
10)飼い主教育
・姿勢反応(正常な立位を維持するための複雑な反応)
固有知覚反応
手押し車反応
片足跳び(ホッピング)
姿勢性伸筋突伸反応
踏み直り反応
片肢歩行反応
・脊髄反射
膝蓋反射
屈曲反射
上腕二頭筋反射
上腕三頭筋反射
肛門反射
交差伸展反射
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眼科系(感覚器系)
各々の検査の適用と意義とその解釈及びその実施方法について学びます。
・視覚反応
瞬き反射
瞳孔反射
フルオルセチン
シルマーティアー
眼圧(トノペンXL使用)
倒置法―眼底(網膜等)
検眼鏡―眼底(網膜等)
細隙灯―眼底(網膜等)
また疾患については以下の3大疾患についての診断と治療・対処法について学びます。
・結膜炎
・角膜潰瘍
・緑内障
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骨格系(整形外科系)
歩様の観察から始まる、整形外科的な(主に破行診断のため)身体検査を学びます。まずはその異常の破行が、痛みなどが原因の整形外科疾患か、神経の麻痺からの神経系疾患(固有位置感覚反応等の検査にて)なのかを鑑別します。もし整形外科疾患であるのなら各の四肢の先端からそれらの関節を含めて、その対象性・疼痛・熱感・萎縮・異常音・可動域・脱臼等の程度を触診にて調べます。またドローアサインやオルタニーサイン等も学びます。 |