■他の病院を紹介することもホームドクターの役割 |
みなさんは、愛犬のホームドクターをどのような基準で選んだでしょうか。おそらく、家の近くにある動物病院だからという理由で選んだ人が多いでしょう。ホームドクターの病院が近くにあることは、確かにひとつのメリットです。緊急の場合のことを考えても、病院が近ければ安心です。
しかし、ホームドクターには、もうひとつ大切な条件があります。もし、自分の病院で手に負えないケースであることがわかれば、ほかの専門的な病院を紹介するということです。規模からみれば、1〜2人程度の獣医師でまかなっている動物病院が多いでしょう。そして、それぞれの獣医師には、得意分野と不得意分野があるのが普通です。1人であらゆる医療分野に対応できる獣医師は、めったにいません。
そこで、ワクチン接種、フィラリアやノミの予防措置、一般の健康診断、およびホームドクターの得意分野の治療は、その病院に依頼すればよいでしょう。もし、愛犬がホームドクターの手に負えない病気や、不得意な分野の病気にかかったときは、ホームドクターに専門的な病院を紹介してもらうようにすれば、より確かな診療を受けることができます。 |
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■どんなタイプの病院がよいのか |
人間の病院は通常、いわゆる町の病院(一般の病院)と規模の大きい市立や国立の病院(上級病院)との区別はすぐできますが、動物病院の場合、みな町の病院と思ってよく、その中で規模の大小があるだけです。あえていえば、獣医師やスタッフの数が多く、医療設備の整った年中無休の病院が上級病院に当たるといえるでしょう。獣医師の数が多ければ、それだけ多くの分野の病気に対応できることになります。
ただし、このようなタイプの病院は数が少ないので、多くの人はより規模の小さい病院を選ぶことになるでしょう。理想的には、「24時間診療で年中無休」「大規模でスタッフの数が多く設備が整っている」「交通機関の駅に比較的近いなど交通の便がよい」「治療法などを飼い主が選べる」「費用を飼い主が決められる」などの条件がそろった病院がよい動物病院といえるでしょう。 |
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■わかりやすく説明してくれる獣医師を選ぶ |
よい動物病院の条件のひとつは当然、医療技術が確かであることです。しかし、最初から獣医師の腕を判断することは、飼い主にとって非常に難しいと思われます。ひとついえることは、飼い主に対して、わかりやすく、心のこもった説明ができるかどうかが大切であり、これは獣医師を選ぶひとつの目安になるでしょう。また、断定的なものの言い方をする獣医師は、あまり信頼しないほうがよいかもしれません。医学においては「絶対に正しい、絶対に違う」ということはあり得ないからです。
治療法を飼い主に選ばせる獣医師が、よい獣医師といえます。知識が豊富で、いろいろな治療の方法と可能性を知っていれば、それぞれの方法の長所、短所をよく説明することができるからです。また、診断を下してから、動物の今の状態と、将来に起こることが予測される状態をよく説明してくれる獣医師がよい獣医師です。
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■扱いの上手な獣医師とは? |
診察中に、動物が鳴いたりすると、扱いがうまくない獣医師と思うかもしれません。しかし、動物にいやな思いをさせない技術が高度だと、単純に考えるべきではありません。実際には、動物がいやがるようなことをしなければ、正しい診断や治療ができないこともあるのです。動物がいやがらずに診察を受けているからといって、獣医師の腕がいいとは限りません。むしろ、動物のいやがることを何もせず、楽な方法をとっているというケースもありますから、注意しましょう。
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■重要な病歴聴取と身体検査 |
動物の医療において、病歴の聴取と身体検査は非常に重要な位置を占めます。この2つをきちんと行うことによって、7〜8割は、動物のかかっている病気を2つ〜3つに絞り込めるといっても過言ではありません。特に初診の場合は、診療時間のだいたい30〜50%を、病歴の聴取に費やさなければいけないと考えてよいでしょう。
また、体重や体温をそのつど測ってくれる病院はよい病院といえます。身体検査についても、獣医師が動物の体によくさわって調べることが重要です。したがって、通りいっぺんの質問だけをして、動物の体にもほとんどさわらずに、すぐに注射を打ったり、薬を処方するという治療は、決してよい医療とはいえません。
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■スタッフと設備もよい病院の条件 |
医療技術は獣医師の腕以外にも、病院のスタッフと設備の状況によっても、ある程度決まります。獣医師の腕は確かでも、医療を支えるスタッフの質や量が不足していたり、必要な医療機器がなかったら、獣医師のすぐれた能力や技術を十分に発揮できません。
動物の医療では、スタッフの重要性は格別です。最近、VTと呼ばれる動物看護士の重要性が叫ばれるようになり、獣医師1人の医療形態から看護士を導入する形態に変わりつつあります。専門的な用語でいえば「ツーハンドテクニック」から「フォーハンドテクニック」へということで、1人の手よりも2人の手で、より充実した医療を目指すようになってきました。
具体例をあげれば、レントゲン検査を行う場合、人間の医療ではレントゲン技師が1人いればいいのですが、動物の場合は、麻酔でもかけない限り、ほかに動物を保定する人が必要になります。このような例はほかにもたくさんありますから、獣医師のほかにスタッフがいるかどうかも、動物病院を選ぶ基準のひとつになります。 |
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■なぜ医療費には差があるのか |
動物病院で治療を受けるとき、費用がどのくらいかかるかが重要な問題になります。飼い主が、できるだけ費用を安く抑えたいと考えるのは当然です。医療費は、動物病院によって差があります。このことが、料金トラブルの原因の1つになっているようです。
しかし、病院によって医療費に差があることには理由があります。もちろん、費用の違いが医療のレベルに完全に比例するわけではありませんが、一般的にいえば、医療費に差が生じる大きな要因は、医療のレベルの違いでしょう。ただし、高い医療費を請求する病院が、必ずしも高いレベルの医療を行っているとは限りません。しかし、逆に医療費の低い病院は、ほとんど例外なく高度な医療を行っていることはありません。 |
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■医療のレベルによる料金差 |
医療のレベルの違いによって、料金に差が生じることを、具体例をあげて説明しま
しょう。
たとえば、動物が交通事故にあって脚を骨折したとします。この場合、治療法はいくつか考えられます。化膿を止めて、ショックを除き、骨を固定するだけの治療法もあります。この治療を受けた場合、脚は少し曲がったままで、多少とも破行も残るかもしれませんが、動物が生活していくことはできるでしょう。もちろん、程度によって、不自由さは違います。この治療法が、費用を最も低く抑えられます。
ただし、たとえば腰の部分が骨折または脱臼したケースでは、それなりの処置をしないと、膀胱のマヒが治らず、生命が危険にさらされることがあります。骨折の部位
によっては、ほかの処置が必要になることもあるので、注意しなければなりません。
手術を受ける方法もあります。手術をすれば、脚はより正常な状態を取り戻し、事故前とほとんど同じように生活することができるようになるでしょう。当然、この場合、前者の治療法に比べ医療費は高くなります。また、骨折の手術方法にしても、ピンやワイヤーで固定する方法から、外固定法、内固定法(ASIF法)などいろいろあります。これらの方法によっても、料金に差が生じます。
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■検査を受け方によっても生じる料金差 |
さらに、手術を受ける場合、麻酔の問題があります。麻酔をかけるときは、緊急時以外、何の検査もせず、いきなり麻酔をかけることはまずありません。
一般には、身体検査、血液検査、尿検査などを行い、心臓、腎臓、肝臓などの状態を調べ、どんな麻酔法が最も適切であるかを判定しなければなりません。また、交通事故の場合は、胸に空気が溜まっていることが多いので、それを調べて、溜まっていれば処置をする必要があります。さらに、膀胱が破裂していることも考えられますので、その検査も不可欠です。
しかし、どうしても費用をかけたくなければ、そのような検査を省略することも可能です。その場合、もちろん危険率は高くなります。大まかなところ、麻酔前の検査をしなくても、90%以上は特別に問題は起こらないようです。しかし、残りの10%は、問題が起こる可能性があります。たとえば、骨折の場合、骨以外の検査をせず、麻酔をかけて手術をしたところ、手術後に腎臓、肝臓、膀胱などが破裂していたことがわかり、動物が死亡してしまうことも起こるのです。
このように、一般的には費用を低めに抑える場合は、危険性をある程度覚悟しなければなりません。これに対し、より安全性を選べば当然、費用は高くなることになります。 |
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■医療費を決めるのは飼い主であるあなた |
料金を一方的に押しつける病院は、よい病院とはいえません。前述のように、通常
、治療法は1つではありません。ほとんどの場合、複数の治療法があります。さらに細かく見れば、麻酔をかける場合でも、麻酔の種類や方法(駐車麻酔、ガス麻酔など)、消毒の方法(滅菌した手袋・ガウンの使用、消毒薬の違い、手術器具の消毒方法、消毒の回数など)、外科用の縫合糸の種類、麻酔モニターの方法の違いなどによって、医療費に大きな差が付きます。 そして、最終的に治療法を選択するのは飼い主であるあなたです。獣医師は可能な治療法について説明し、アドバイスを与えるだけです。逆にいえば、いろいろな治療法についてよく説明し、飼い主に治療法を選ばせるのがよい獣医師です。
飼い主が治療法を選択するということは、費用も飼い主が選べるということです。 先の例でいえば、骨折した脚の手術をするかしないか、手術をする治療法を選択した場合、麻酔前の検査をするかしないかを最終的に飼い主が選択し、それに応じて医療費が決まることになります。したがって、医療費は飼い主であるあなたが決めるのだといえます。納得できるまで質問しよう
実際問題として、いくつかの治療法があることを説明して、飼い主に選択を委ねる獣医師ばかりがいるわけではありません。そこで、飼い主の側にも積極的な態度が必要です。たとえば、獣医師から外科手術を勧められたとします。そのとき、説明が不十分で、納得がいかなければ、「できるだけ切りたくないので、薬を使うとか、ほかの治療
法(たとえば、内視鏡や腹腔鏡)はありませんか」と質問してみればいいでしょう。
もちろん、手術をしなければ助からないケースもありますが、その場合でも、手術の必要性を飼い主が十分に納得していないと、医療トラブルの原因にもなりかねません。治療を納得して受けることは、非常に重要です。わからない点があったら、納得できるまで獣医師に聞いてください。もし、あなたの質問に快く答えようとしないとしたら、よい獣医師とはいえません。 |
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■セカンドオピニオンを利用しよう |
治療法に納得がいかず、質問してもあまり答えてもらえない場合、動物病院を変えることが重要です。欧米では、人間の医療も含めて、病院を変える前に、セカンドオピニオン、すなわち2番目の医師の意見を得るのが普通です。
日本ではまだセカンドオピニオンのシステムはほとんど利用されていませんが、ぜひ普及させるべきだと思います。
セカンドオピニオンを聞きたい場合は、聞きにいく病院に予約を入れ、事情を説明して、意見を聞きたいと申し入れます。オピニオンを求められた獣医師としては、動物を連れてくることを望むと思いますが、必ずしも連れていかなくても構いません。その場合は、動物を連れていかないことを話しておきましょう。そして、相談時間とその料金を、あらかじめ聞いておくほうが安心です。また、できれば最初の病院で受けた治療法や検査データなどは持っていくとよいでしょう。
もし、最初の病院が検査データの提供を拒むようなら、そのような病院は信頼するに足りないと判断してよいでしょう。
セカンドオピニオンを聞くときは、検査の内容、治療法、予後、料金など、いろいろなことについて聞くことが重要です。聞き忘れることがないように、聞くべきことをあらかじめメモしておくとよいでしょう。
このように、よい動物病院を選ぶには、飼い主であるあなたの側に、かなりの努力が必要とされるといえます。何ごとにおいても、よい結果を望むには、それなりの努力が必要となります。愛犬のことを一番よく知っているのは、飼い主であるあなたです。その愛犬の病気を治し、命を救うために、飼い主は積極的にかかわる必要があります。愛犬の病気の治療は、獣医師と飼い主が協力して行うものであることを忘れてはなりません。 |
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