水道水は各々の地域の源泉によって硬度が異なるため、浄水器や製水器の使用をお勧めします。犬には非加熱性かつ弱アルカリ性軟水が最も良いのですが、より性能のよい浄水器、製水器を使用するのであれば水道水でも十分でしょう。
どの程度の軟水か硬水かを調べるには各地域の水道局のホームページで把握できます。硬水か軟水かを判定する試験紙、テトラテスト(総硬度試薬)等も売られています。
ちなみに、軟水は舐めると少し甘く感じ、軟水で米を洗うとより白くなります。一方、硬水は泡立ちが悪く、洗顔後皮膚がつっぱる感じがします。このように感覚としてもある程度判断できます。
→「水があなたの犬の病気の原因になっていませんか?」と疑問を投げかけられることがまれにあります。覚えておくと役に立つことがあるかもしれません。
<日本の水道水>
日本の水道水の塩素量は世界で最も高いと言われています。これは清潔好きの日本では殺菌が重視されているからかもしれません。高い塩素が犬の健康に悪影響をもたらすかは今のところ不明であり、被害はあまり論議されていません。しかし、水中に暮らす魚には水道水を使用する人はいないと思います。何であれ水道水が良いと言うにはちょっと無理があるでしょう。
硬水を軟水に変える装置(硬水軟化装置-water softener)を使用している水は、特に高齢の犬には投与しない方が良いと考えられています。硬水軟化装置とは塩を使用したイオン交換樹脂の働きで水中に含まれるカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの陽イオンをナトリウムイオンに置き換える装置であり、米国等ではよく一般家庭に設置されています。
水道水の塩素の問題は、飲水の問題だけでなく肌に触れた場合も、脱塩素の水とは異なる刺激を感じる人もいるようですので、犬にもできれば脱塩素化の水を使用することをお勧めします。
水道水以外では、軟水系のミネラルウォーターや地下深層水(特に体力の衰えた場合)等を交互に使用することをお勧めします。
水道水を半分凍らせて、表面を割り、凍らない半分の水を捨て、白くない透明部分の氷を溶かすと雪解け水のようになり比較的良い水が出来上がります。
肌に触れる水の場合は、ガーゼにミカン大の木炭を包み、500mlぐらいの水に7-8時間漬けて置くと肌にとって良い水になります。これは風呂に入れる場合は特に有効です。また白米や玄米のとぎ汁を24時間程度(夏場は12時間)置き、これを風呂に使用することも有効です。
水道水を煮沸すると塩素は飛んでカルキ臭は無くなります。しかし、短い5-6分の煮沸では逆に毒性のあるトリハロメタンが2-3倍程増えます。ヤカンの蓋を空けて30分以上沸騰させることでトリハロメタンを消せますが、現実問題となると少し難しい感じがします。沸騰させた水の保存期間は冷蔵庫で12-24時間以内です。
一般的に犬に水を与えると、肝臓や腎臓に作用して、老廃物の排出がよりスムーズになります。正常の場合、消化管や腎臓を通じて清浄化されるはずの老廃物が水の不足により体に蓄積して、毛細血管に押し戻され血管や臓器に悪い影響を与える可能性があります。
犬に定期的により多くの水分を与えると、体内の酸性の状態が改善されます。
犬に冷え症があるか論議されるところですが、西洋医療ではの冷えに対しての対応は困難なため、まずは、水を与えることから始めます。
<ミネラルウォーター>
我が国のミネラルウォーター類の品質表示ガイドラインは平成2年と平成7年に内容物の表示を農林水産省によって定められています。ミネラルウォーター類と言われる分類は、ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、品質を安定させる目的などのためにミネラル調整、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合などが行われているものです。
◇ナチュラルミネラルウォーター
ナチュラルウォーターは特定の水源から採水された地下水を原水とし、沈殿、濾過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わないものと規定されています。ナチュラルウォーターのうち鉱化された地下水「地表から浸透し、地下を移動中又は地下に滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水(天然の二酸化炭素が溶解し、発泡性を有する地下水を含む)をいう」を原水としたもの。
<飲用水、ボトルドウォーター>
ナチュラルミネラルウォーター及びミネラルウォーター以外のものです。
<蒸留水(Distilled water)や純水(Pure water)>
常用する水の中で注意すべき水です。これらの水は本来、精密機械の洗浄用の水です。 生のままで飲めないわけではありませんが、生で犬に与えることはお勧めしません。犬に与えても直ぐに体内の反応が出るわけではありませんが、長く与えればそれだけ健康を害する恐れがあります。
蒸留水の水槽に淡水魚を放すと、酸素がないため窒息死しますし、人間では絶食時に蒸留水を1.8Lも飲めば死に至る危険性があるようです。
災害用水(5年間保存水など)は蒸留水、純水または超高温加熱殺菌水です。厳しく言うとこれらの水は飲水と言うより、災害時には料理に使用する程度の水と理解した方が無難でしょう。
以前、一部の飼い主向け米国記事に「犬の水に蒸留水を」という記載がありましたが、現在ではこの説はほぼ否定されています