■嘔吐の原因となる胃腸病 |
胃の運動機能が障害を受けるため、嘔吐が引き起こされることがよくあります。すなわち、胃の運動が正常時より速くなったり遅くなったりしたり、あるいは運動機能が停止してしまうのです。
代表的な病気としては、大型犬によく起こる胃拡張や胃捻転(いねんてん)があります。
特に胸の深いドーベルマン、ジャーマン・シェパードなどが、よくこの病気にかかります。
このような病気を防ぐには、食事をできるだけゆっくり食べさせることが大事です。犬がどうしても早く食べてしまう時は、少しずつ何回かに分けて与えるとよいでしょう。
一気に大量の食べ物を胃に送り込み、すぐに水を飲んで、その直後に運動すると、胃の中のガスが発酵し、胃捻転を起こす恐れがあります。
胃捻転は命に関わる病気ですから、十分に注意してください。
また、この病気はカルシウムの過剰摂取とも関係があると考えられています。
大型犬を飼っている方は、食事をゆっくり食べさせ、食後には休息させて、カルシウムを与え過ぎないようにすることが大切です。
胃と食道の接合部である噴門や、胃と小腸の接合部である幽門に障害がある場合も、動物は嘔吐することがあります。
比較すると、胃と小腸の接合部、すなわち幽門部の障害の方が多く、特に短頭種のシー・ズーやパグなどに多く見られます。これらの犬種で、食後20~30分くらいたった頃に嘔吐が見られる場合は、この病気を疑うことができます。
治療法としては、薬物を生涯にわたって投与するか、または手術をすれば通常は治ります。
嘔吐と吐き出しの特徴 |
・胃の障害
・胃と食道、あるいは小腸の接合部の障害
・食事(食べ過ぎ、腐敗物、刺激物など)
・中毒症
・代謝性疾患
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■食べ過ぎも嘔吐の原因 |
食べ過ぎたり、腐敗した物や刺激の強い物を食べた場合も、嘔吐が起こります。嘔吐の原因としては、これが最も多いといえます。
動物が嘔吐した場合は、食べ過ぎなかったかどうか、古い食品や刺激の強い物を食べなかったかどうか、調べてみる必要があります。
また、中毒が原因で嘔吐する場合もありますが、これは説明がなかなかつかないことがあります。
飼い主が実際に食べたところを見たというのであれば、簡単に診断できますが、そういう確定的な証拠がない場合は、特定の毒物を検出することがなかなか難しいことがあるからです。
そのほかに、消化器疾患以外の病気が原因で嘔吐することもあります。主として代謝性の疾患であり、代表的なものに、副腎皮質機能低下症があります。また肝臓、脾臓などの病気によって、嘔吐が引き起こされることもあります。
ですから、動物が嘔吐をしても、消化器系の病気が見つからない場合、それらの消火器以外の病気を疑ってみる必要があります。
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■古い血液が混じっていたら要注意! |
黄色い液体を吐くと、胃液を吐いたと思うでしょうが、胃液は白い泡のような液体です。黄色い液体は胆汁液です。ですから、犬が黄色い液体を吐いた場合、胃の内容物がなくなって、胆汁液が逆流したと考えてください。
嘔吐物に少量の血液が混じっていれば、胃のびらん、潰瘍、腫瘍などの病気が疑われます。
特に吐物がコーヒー色になっていたら、要注意です。
これは血が古くなった色ですから、重篤な潰瘍や腫瘍が疑われます。すぐに動物病院へ連れて行き、処置をしてもらう必要があります。
なお、嘔吐した後の動物の様子を観察してください。嘔吐後、いつもと変わらず元気であれば、通常は心配することはないでしょう。しかし、嘔吐の後、ぐったりして元気がない場合は、深刻な病気が考えられますので、動物病院で診察してもらいましょう。
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■治療の基本は絶食 |
嘔吐の治療は、絶食と絶水が基本です。比較的元気な犬は24時間絶食、少し元気がない犬は12時間絶食させます。もし、元気がまったくない場合は、動物病院に連れて行き、獣医師の指導に従う必要があります。
絶食、絶水中に動物が喉の渇きを訴えた場合、氷のかけらを数個与えるとよいでしょう。そうすれば、喉の渇きが癒され、胃粘膜の炎症も少しは抑えられます。
比較的元気な犬の場合は、1~2日の間、完全に絶食し、24時間絶水するのが理想的です。そして、嘔吐の回数が減ってきたら、消化のよい食事をいつもの半分程度、3~6回に分けて与え、様子を見てください。
もし、絶食と絶水を行っても嘔吐が止まらない場合は、動物病院へ連れて行く必要があります。
嘔吐が続くと、水分が多く体外へ出てしまい、体力が消耗します。ひどい場合は、急激な血圧低下を招き、ショック症状が起こることもあります。
とにかく、元気の喪失を伴う嘔吐の場合は、早く原因を突き止め、治療を行うことが大切になります。
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■下痢は小腸性か大腸性かを鑑別 |
動物が下痢をする時、その原因は小腸にある場合と大腸にある場合の2つに大きく、分けられます。そして、この原因の部位の鑑別は重要です。
この鑑別は、知識があればそれほど難しくありません。
犬の場合、下痢の原因が小腸にある時は、体重の減少が起こります。しかし、原因が大腸にある時は、体重の減少はあまり見られません。
というのは、小腸は栄養を吸収するところですから、小腸に病気があると栄養が吸収されません。したがって、体重の減少が起こるわけです。また、同じ理由から、貧血やタンパク質の低下を招くこともあります。
これに対して、大腸の主要な機能は水分を吸収することです。したがって、大腸の機能が低下し、水分が吸収されないで下痢が起こっても、栄養はすでに吸収されているわけですから、体重の減少はあまりみられないことになります。また、貧血やタンパク質の損失という現象もあまり起こりません。
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小腸性 |
大腸性 |
体重の減少 |
あり |
なし |
糞便の量 |
増加 |
正常か減少 |
回数 |
正常か増加 |
増加 |
嘔吐 |
伴うことがある |
同 |
糞便失禁 |
なし |
見られることがある |
関連症状 |
腹部膨張、腹鳴 |
肛門掻痒 |
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■便のチェックも大切 |
便の状態を調べることも、下痢の原因部位の判定に役立ちます。
便にゼラチン状の粘膜が付着していれば、大腸性の下痢です。鮮血が見られる場合も、大腸性です。これに対して、口臭があったり、腸管に空気がたまって腹が膨らみ、抑えるとゴロゴロ音がしたり、おならが出る場合は、小腸性の下痢です。
また、動物がよく水を飲む場合も、ほとんど小腸が原因です。
ほかにも、確実性はいくぶん低くなりますが、次のような判定基準があります。
便の量が多い場合は小腸性、便の回数が多い時は大腸性の可能性が高いといえます。
また、嘔吐を伴う場合は、ほとんどが小腸性です。しかし、大腸の病気でも、約30%は嘔吐を伴います。
便をこらえることができず、その場で出てしまう場合も、ほとんどが大腸性の下痢です。
とにかく、下痢の原因部位が小腸か大腸かによって、治療法と処方する薬剤が違ってきますから、その鑑別は重要になります。
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■環境の変化から下痢を起こすことも |
嘔吐の場合と同様、食べ過ぎや腐敗した物を食べたために、下痢が起こることもあります。
ですから、犬が下痢をしたら、普段より食べ過ぎなかったか、散歩中などに拾い食いをした可能性はないかなどについても、飼い主の方は考えてみてください。
また、環境の変化が下痢の原因になることもあります。たとえば、お客様が見えて、犬が興奮したとか、普段よりたくさん運動したため、下痢をするというケースも考えられます。
このようなケースは、まだストレスに慣れていない仔犬によく見られます。しかし、下痢の原因をすべてストレスと考えるのは危険です。
寄生虫が下痢の原因になることもあります。
室内犬は年に2回、室外犬および散歩をする犬は年に4回、寄生虫の検査を受けることが勧められます。もし、検査を受けていない犬が下痢をした場合は、寄生虫を疑うこともできます。
パルボウイルス腸炎などの伝染病が原因になることもありますが、1年以内に予防接種を受けていれば、心配はありません。とにかく、飼い主の方は、予防の可能な伝染病については、年に1回以上のワクチン接種を行ない、必ず予防するようにしてください。
また最近、食事アレルギーが原因で下痢をするケースもあることが分かってきました。
動物が食事アレルギーであることが分かった場合、アレルギーの原因となる食事を除去する必要があります。アレルギーの特別食については、獣医師の指導に従ってください。
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■元気がない場合は危険 |
下痢をしている動物が、元気がある場合とない場合があります。元気がある場合は、さほど心配する必要はありません。
しかし、元気がなく、食欲も喪失している場合は、重篤な病気にかかっている可能性もありますから、速やかに動物病院で検査をしてもらってください。
動物病院では、血液検査、尿検査、X線検査のほかに、内視鏡検査、超音波検査などを利用して、徹底的に検査を行なうことができます。
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■下痢の治療法 |
下痢の治療も、嘔吐の場合と同様、絶食療法が基本です。
動物が比較的元気であれば、24時間絶食します。
元気がない場合は、動物病院で輸液を行いながら、絶食します。
その後、消化のよい物を少しずつ与えます。
量は健康な時の3分の1か4分の1程度とし、胃に負担をかけないように、何回かに分けて与えます。
絶食中に水を飲みたがったら、嘔吐の場合と同じように、氷を与えてください。
動物病院では、症状に応じて薬剤の投与も行いますが、下痢の治療で最も大事なのは、絶食を含めた食事の与え方です。絶食するのは消化器を休めるためです。そして、徐々に回復してきたら、消化のよい物を少しずつ与えるわけです。
消化のよいフードや低アレルギー食は、動物病院で販売されています。また、結腸の病気には高繊維食が有効であることが知られています。これも多くの動物病院にありますので、利用することができます。
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■Q&A |
■Q
尿の色が濃い黄色です。ビタミン剤のようなにおいがします。食事はラム&ライスの成犬用を与えています。あと、野菜と果物、市販のペット用魚類などです。
母犬も全く同じ物を与えていますが、こちらの尿は別段、色もにおいも気になりません。血液中のコレステロール値が360、母犬の方が430とかなり高いです。他に病歴はありません。食欲もあり、元気ですが心配です。
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■A
尿の色が濃いというのは、一般的に脱水を示していることが多いのです。脱水とはすなわち水分が足らなくなっているのです。ということは、主には泌尿器系の病気ということになります。
また、ビタミン剤を与えたり、強肝剤を注射したりすると尿の色は黄色くなります。あなたの犬はそれらのものは与えていないと思われますので、脱水によるものか別の代謝病かあるいは先天的な泌尿器系の病気の可能性もあるかもしれません。
あなたの犬は、太リ過ぎてはいませんか? もし太っていればそれらを改善する必要があるでしょう。
しかし尿の色は、食事によってもかなり違ってきます。ラム&ライスもよいのですが、一度食事を変えてみて、それでも尿の色が黄色くなるかどうか確かめてみる必要があります。
水の飲み方はどうでしょうか。もし水の飲み方が少なければ、より脱水が疑われます。
そしてもっとも重要なのが、尿の検査です。尿の検査で比重が高ければ脱水があリ、何かの異常と言えます。
コレステロールが高いということですが、食事をした後であれば当然高くなります。
しかし、甲状腺の問題とか、肝臓、腎臓、膵臓等の病気でコレステロールが高くなる場合があります。またその時にタンバク質の値が低くなることもあるようです。現在は元気ということですが、一度病院でしっかり診てもらったほうがよいでしょう。
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