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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

マウスの飼い方と病気

性質について
食餌について
住まいについて
予防看護について
早見表
繁殖について
一般的に見られる臨床的疾患状態
人獣共通伝染病の可能性

『エキゾチックペット獣医学ハンドブック』
(日本ベェツ・グループ発行)
マウスの項目より一部を転載
■性質について
マウスはやさしく取り扱うことが必要とされる、臆病で、社会性の縄張り行動をする齧歯類である。マウスは脱走の名人で、昼夜を問わず活動的である。

マウスの社会体系は、雄の階層性から成る。成獣の雄は、最初にケージに一緒に入れられたときにケンカをするかもしれない。子持ちの雌は、自分の巣を守ることがよくある。マウスを乱暴に扱ったり、驚かせたりすると、歯で噛まれたり挟まれたりするかもしれない。
■食餌について
食餌については、市販の齧歯類の餌(蛋白量14%以上。理想を言えば20〜24%)が、ペットマウス用の食餌に推奨される。3週齢以下のマウスには柔らかいペレットがよい。こどもはだいたい2週齢あたりからペレットをかじったり水を飲んだりし始め、3週齢で離乳する。人工飼育は難しいが、4時間毎にボトルで行うことはできる。

種子を主体とした箱詰めされた食餌は、マウスには不十分で適当ではない。マウスがよい品質のペレット食を食べ、新鮮な水を飲んでいれば、甘い物、野菜、チーズ、液体ビタミン、塩の塊は、マウスには奨められない。
■住まいについて
マウスの住まいについては、提唱される最小の囲いの大きさは、それぞれの成獣のマウスに対して12〜15インチ×12〜15インチ×高さ6インチである。子持ちの雌では、通常の空間の2〜3倍の大きさが必要である。マウスの住まいは金属(標準ワイヤーメッシュで齧歯類タイプ)、プラスチック(上にメッシュあるいはスロットバーが付いている靴箱型のもの)あるいは、安全な金属メッシュのふたが付いた改造された水槽がよい。

住まいは運動用の回し車、巣の領域および食餌の領域の設備を備えた十分に大きいものであるべきである。寝床は、小さく破った紙、松あるいは堅木の削りくず、あるいは再生紙から作られたペレットがよい。杉の削りくずは、皮膚や粘膜を刺激する可能性があるので奨められない。また、肝臓の代謝を阻害する芳香性のオイルが含まれているので奨められない。ティッシュペーパー、ペーパータオル、ティッシュ、古い靴下あるいは二叉手袋が、マウスにとって大変すばらしい巣の材料となる。

全ての寝床は、最低でも週に2回は交換されるべきで、臭い、尿/湿気あるいは糞便が積もったら、もっと頻繁に行うべきである。ケンカを避けるために雄の家は別々にする。以前に1頭でケージに入れられてきたマウスは、他のマウスを導入したときに、よりケンカをする傾向がある。30〜70%の湿度で16.7〜29.4℃(平均℃22.2)の室温が理想的である。
■予防看護について
・よい管理、衛生、食餌
・コロニーあるいは繁殖世帯において、潜在性の感染症に対してコロニー代表の動物の日常的なスクリーニングを行う。
・大きなコロニーにおいて、フィルターケージと特別な塩素で消毒された水が疾病抑制のために必要となるかもしれない。
■早見表
生理学
寿命 2年(マウスの系統に依存する)
成獣の雄の体重 20〜40g
成獣の雌の体重 25〜40g
体表面積 10.5cm2/g
直腸/体の温度 36.5〜38.0℃
染色体二倍体数 40
食物消費量 15g/100g/日
水分消費量 15ml/100g/日
胃腸管通過時間 8〜14時間
呼吸数 60〜220/分
1回換気量 0.09〜0.23ml
酸素消費量 1.63〜2.17ml/g/時間
心拍数 325〜780/分
血液量 76〜80ml/kg
血圧 113〜147/81〜106mmHg
歯の配置 1/1切歯、犬歯がないあるいは小臼歯がない3/3大臼歯。
脱落性歯列ではない。
オープンルートの切歯(長冠歯)。
大臼歯は独立した永久歯根。

生殖
思春期(雌) 28〜40日
繁殖開始(雄) 50日
繁殖開始(雌) 50〜60日
発情周期の長さ 4〜5日
妊娠期間 19〜21日(雌が分娩後発情で繁殖が行われた場合はこれに3〜5日加える)
分娩後発情 生殖能力あり
産子数 10〜12
出生時の体重 0.5〜2.0g
離乳年齢 21〜28日
繁殖存続期間
(商業用)
7〜9ヶ月(5〜10匹の仔ラット)
仔ラットの生産量 8ヶ月
ミルク構成 脂肪2.1%、蛋白9.0%、乳糖3.2%

■繁殖について
マウスの繁殖は、小季節性変動のみをもつ連続的な多発情性の齧歯類である。マウスが若すぎる、あるいは10週齢以上で初産であると、受精率が低下するかもしれない。通常、最初の子どもは次の子どもよりも小さい。発情は通常夕方に起こり、12時間持続することがよくある。

雌は分娩後発情(子どもを生んだ後14〜28時間)があるが、授乳中はない。授乳により3〜5日着床が遅れるかもしれない。発情期でない雌は、雄の導入によって同期性を持たせることができる。普通全てが72時間以内に準備できる。

最も効率の良い繁殖計画
多婚性 1頭の雄と2〜6頭の雌をずっと同居させる。雌は分娩期間中、ケージから離すために取り除かれる。分娩後発情は利用しない。子どもは離乳したら取り除かれる。記録管理は難しいかもしれない。通常、総同腹子数はより少ない。利点として、より大きな子どもが得られ、子どもの数当たりの離乳の割合がよくなる。
単婚性 1頭の雄に対して、1頭の雌をずっと一緒にしておく。子どもは次の出産期間中取り除かれる。この方法は分娩後発情を利用するので、最大数の同腹子がつくられ、記録管理が簡単にできる。より多くの雄、ケージ、労力が必要となる。

妊娠と子育てについては、繁殖後の栓子は交配の24時間以内に見られるかもしれない。体重増加、乳腺の発達が14日目で顕著になる。雌は、もし交配がうまくいかなかったら1-3週持続する偽妊娠を経験する。マウスは妊娠期間の終わり近くに、繁殖のための巣を作る。ほとんどのマウスの一家は、巣を占領し、子どもが数頭の母親の乳を吸うことがよくある。出産後少なくとも2日間は、子持ちの雌を不安にさせない。
■一般的に見られる臨床的疾患状態
・体重減少
・細菌性敗血症
・外部寄生虫症
・熱ストレス
・仔マウスの動物間流行性の下痢
・アデノウイルスを含むウイルス性の感染症
・Hymenolepis spp. 膜様条虫属
・栄養不良
・蟯虫
・仙台マウス肝炎ウイルス
・C. piliformes
・外傷
・不正咬合
・マウス水痘
・潜在性ウイルス感染症
・毒性/中毒(プロカイン、有機燐酸殺虫剤、クロロホルム、ストレプトマイシン)
・ヘキサミチアーシス
・ランブル鞭毛虫症
・急死(あるいは飼育者が微妙な ・飢餓/脱水徴候に気が付かなかった)
・流涎症
■人獣共通伝染病の可能性
マウスの鱗屑や尿に対するアレルギーの他には、ペットマウスの問題はめったにない。潜在的にマウスは、Salmonellaサルモネラ属、LCM、 Hymenolepis spp.膜様条虫属、その他の人獣共通伝染病を運んでくる可能性がある。