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all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA
賢い食事の与え方
■カロリー過剰に気をつけよう ■年齢別に与えるのが基本 ■仔犬には高タンパク食を ■だいたいの必要カロリー量を知っておこう ■カルシウムの過剰はかえって危険 ■よいフードは情報提供もよい ■ホームメイド食は塩分に注意 ■ネギ類は溶血性貧血の原因 ■鶏の骨は斜めに裂けるので危険 ■飼い主も犬も「塩分控えめ」 ■新鮮な水をいつも用意しておこう ■牛乳を与えると下痢を起こすことも ■定期的に体重を測ろう ■体重は健康チェックの大切な要素 ■痩せてきたら要注意 ■食事は健康の源、しっかり管理しよう |
■カロリー過剰に気をつけよう |
食事が健康に大きな影響を与えることは、人間でも犬でも変わりません。食事は量と質の両面が大切です。まず、量の面では、現代では量が不足して病気になるケースはほとんどありません。逆に、食べ過ぎることによって、いろいろな病気が誘発される可能性があります。特に健康な仔犬は食欲旺盛で、何でもほしがります。犬がほしがるままに食べ物を与えていると、食べ過ぎてカロリー過剰になることがあります。食事は適正量を与え、決して与えすぎないことが大切です。 |
■年齢別に与えるのが基本 |
犬の食事に関して、飼い主のみなさんにぜひ知っておいてほしいのは、年齢によって食事を変える必要があるということです。人間の場合、大まかに分けても、赤ちゃん、成人、高齢者では、食事の内容が違います。年齢によって、必要なカロリー量や栄養素のバランスが異なるからです。犬も、幼犬、成犬、高齢犬では、食事の内容を変えるのが当然なのです。 ところが、多くの場合、年齢に関係なく、同じ種類の食事が与えられているのが現状です。つまり、犬が何歳でも、成犬用の食事を与えている飼い主の方が非常に多いのです。「食事は年齢別に」という基本を覚えておいてください。 |
■仔犬には高タンパク食を |
一般に1歳以下の犬には幼犬食、1〜6歳の犬には成犬食、6歳以上の犬には高齢食を与える必要があります。これらを分けている最も大きなポイントは、タンパク質です。タンパク質は、動物の体をつくっている大切な栄養素です。 幼犬はこれから成長し、成犬の体をつくっていかなければなりませんので、当然、タンパク質の要求度が高くなります。幼犬用につくられたフードは、高タンパク食になっています。 成犬には、体を維持していくだけのタンパク質が必要になります。高齢犬になると、体の諸機能が衰えてきます。そのため、タンパク質の摂取量が多いと、体が処理しきれず、悪い影響が及ぶことがあります。 現在、市販されているフードの多くは成犬用のフードですが、年齢別のフードを製造しているメーカーもあります。 |
■だいたいの必要カロリー量を知っておこう |
エネルギーの必要量は、犬の大きさ、年齢、犬種、飼育目的によっても違います。
一般には中型の成犬の場合、1日に体重1キロ当たり50〜100カロリーが必要となります。小型犬の必要量は中型犬の平均値より少し多くなり、大型犬は逆に少なくなって、だいたい50〜60カロリー程度です。愛犬の体重が30キロなら、1日に1500〜1800カロリーが必要になります。 幼犬は育ち盛りですから、たとえば4週齢までの仔犬では150〜200カロリーが必要となります。毎日の食事で数字を気にしているわけにはいかなくても、愛犬の1日のだいたいの必要カロリー量を知っておくと、食事を変えるときなどにも便利です。 |
■カルシウムの過剰はかえって危険 |
一般に市販のフードには、必要なビタミン、ミネラルがバランスよく含まれています。特にカルシウムは、骨の成分として重要な栄養素ですので、十分に含まれているでしょう。そのようなフードを適正量与えていれば、通常は他に栄養素を補給する必要はありません。特に大型犬の飼い主さんのなかで、カルシウム不足を心配し、フードにカルシウムを加えて与えている人がいるようです。 しかし、これはかえって危険です。カルシウムを過剰に摂取すると、骨の病気などが発症しやすくなることが指摘されています。カルシウムをたっぷり与えると、骨が強く丈夫になると思いがちですが、逆の作用がありますから、十分に注意しましょう。 カルシウムを特別に投与するのは、獣医師が診断して必要と認め、処方した場合のみと考えてください。決してただ単に大型犬だからという理由で、カルシウムを投与しないでください。 |
■よいフードは情報提供もよい |
犬の食事は、市販のドッグフードとホームメイド食に分けられます。市販のフードは、栄養学的に十分に研究されているので、年齢や体重や運動量に合わせて適正量を与えれば、通常は問題ありません。フードの種類は非常に豊富ですが、飼い主さんにいろいろな情報を提供しているフードがよいでしょう。 まず、栄養成分をきちんと表示しているものがよいでしょう。その場合、単にタンパク質を何%含有しているということだけではなく、できればどんな食品のどの部分を使ったかということまで、はっきりと資料提供しているものがベストといえます。 また、製造年月日または品質保証期限、問い合わせ先、たとえば飼い主からの質問を受け付ける「お客様相談室」などの電話番号、あるいはホームページなどが書かれているものがよいでしょう。 |
■ホームメイド食は塩分に注意 |
ホームメイド食を与えている場合、カロリーや栄養素のバランスを考えなければなりません。最近では、動物のためのカロリーブックも出版されていますので、それらを参考にすることもできます。 注意しなければならないのは、人間の食べ物と同じようにつくって与えないことです。材料は共通のものを使っても、調理法には気を付けなければいけません。特に塩分に注意しましょう。人間が食べるために調理したものは、犬には2〜3倍も塩分が多くなります。塩分を多く摂取すると、腎臓病をはじめとしたいろいろな病気にかかりやすくなります。 また、以下に述べるように、犬に与えてはいけない食品もあります。人間は食べることができても、犬が食べると害になる食品があることを知っておきましょう。 |
■ネギ類は溶血性貧血の原因 |
タマネギ、ナガネギ、ニンニクなどは、犬に与えてはいけない食品としてよく知られています。これらの食品を犬が食べると、溶血性貧血(タマネギ中毒)を起こす可能性があります。これは、赤血球が溶けてしまう特殊な貧血です。このようなネギ類は、煮ても焼いても毒性が失われることがないといわれます。どの程度の量で貧血が起こるかは、個体によってかなり差があります。 ほんの少量のネギ類を食べただけで、中毒を起こすこともあります。また、以前は大丈夫だったのに、あるときから中毒を起こすケースもあります。ネギ類は、与えてはいけない食品として覚えておきましょう。ハンバーグ、ニンニク味の鶏の唐揚げなど、人間の食べ物にはネギ類を使ったものがたくさんあります。飼い主さんがついうっかりしている間に、犬がそれらを食べてしまうことがありますので、十分に注意しましょう。 私たちの病院の例でも、後述する骨もそうですが、飼い主さんが調理中に食べ物床に落としてしまい、犬がそれをさっと食べてしまうなど、ちょっとしたスキを狙われたということが少なくありません。 |
■鶏の骨は斜めに裂けるので危険 |
各種の骨も与えてはいけないものです。鶏の骨を与えていけないことは、知っている人も多いでしょう。噛むと骨が斜めに裂けて、胃に突き刺さることがあります。また、歯が折れる場合もあります。魚の骨も、鯛のように固いものは与えないようにします。魚は、必ず骨を取り除いて与えるのがよいでしょう。魚は、調理して与えましょう。サケ、ベニマス、ニシン、コイなどは、ビタミンを破壊する酵素をもっています。また、寄生虫を媒介する場合もありますから、必ず火を通して調理しましょう。 |
■飼い主も犬も「塩分控えめ」 |
先述のように、人間が食べるために味付けされた食品を与えないようにしましょう。甘いもの、辛いもの、塩気の多いものを与えていると、心臓や腎臓の障害を引き起こしたり、糖尿病の引き金となる可能性があります。 特に塩分の高い食べ物は、体には悪くても、味に刺激があるので、よく食べます。この点が重要です。俗に「塩づけフード」と呼ばれるものは、安く製造でき、犬はよく食べます。しかし、よく食べるフードが、必ずしもよい食べ物とは言えないのです。 人間でも、健康のためには「塩分控え目」がよいといわれます。犬の場合は、もっ と「塩分控え目」が大切です。 |
■新鮮な水をいつも用意しておこう |
健康を保つためという以前に、生命を維持するために、水はきわめて重要です。体内の水の約10%が失われると危篤状態になり、15〜20%が失われると死亡します。 ちなみに三大栄養素では、タンパク質は50%、炭水化物は80%、脂肪は80%失っても、犬はまだ生きていくことができます。水はいつでも飲めるようにしておきましょう。特に、育ち盛りの仔犬は、水が切れるとすぐに弱ります。いつでも飲める場所に、新鮮な水を用意しておきましょう。 |
■牛乳を与えると下痢を起こすことも |
犬に牛乳を与えると、下痢を起こすことがあります。牛乳の含むガラクトースという成分を、消化できないためです。牛乳を温めたり、脂肪分の少ないミルクを与えても、ガラクトースの量は変化しませんので、下痢を起こすことに変わりはありません。 牛乳を与えるのなら、犬用のものにするのが好ましいでしょう。人間用の牛乳でも下痢を起こさなければ、量を制限して与えても大丈夫でしょうが、牛乳を水代わりに与えるのはやめましょう。 |
■定期的に体重を測ろう |
体重は、健康状態を判定する重要な目安になります。定期的(月に1回程度)に愛犬の体重測定を行いましょう。純血種の標準体重は、犬関係の雑誌や本を調べればわかります。あなたの愛犬の標準体重を知っておきましょう。 ミックスの場合、標準体重は数値としてははっきりわからないかもしれません。しかし、体重の状態を調べる簡単な方法があります。胸の肋骨の部分に軽くさわってください。もし、骨が手にゴツゴツさわるようなら 、その犬はやせすぎています。また、手が骨をまったく感じることができない場合、その犬は太り過ぎです。 太り過ぎ場合、多くは食べ過ぎが原因です。毎日の食事を見直し、標準体重に戻す努力をしましょう。 |
■体重は健康チェックの大切な要素 |
食欲があり、便の状態がよく、体重が正常であれば、犬は健康だといえます。仔犬の場合、生後2週間までは毎日体重を測りましょう。体重が増えなかったり、減少している場合、どこかに異常がある可能性があります。その場合は、獣医師に相談してください。 生後2週間以後は、1カ月に1回、定期的に体重測定をします。犬の体重は、生後7〜10日で出生時の2倍になり、4カ月で成犬の約半分となります。もちろん、個体差はありますが、その目安よりかけ離れている場合は、獣医師に相談しましょう。 |
■痩せてきたら要注意 |
正しい食事を与えているのに、犬がやせている場合、体のどこかに異常があると思われます。たとえば、よく公園などを散歩する犬は、寄生虫があるのかもしれません。あるいは、消化器官に障害があることも考えられます。 消化器官に問題がない場合は、肝臓がうまく働かないため、タンパク質の合成がうまくできないのかもしれません。肝臓に異常がない場合は、腎臓が悪いため、タンパク質が排出されてしまうケースも考えられます。 また、腫瘍ができている場合も、犬はやせてきます。このように、体重が減少してくるのは、重大な病気が原因である場合が少なくありませんので、体重測定をするとともに、注意して観察しましょう。 |
■食事は健康の源、しっかり管理しよう |
食事は、決まった時間に決まった場所で与えましょう。このことは、健康としつけの両面から大切です。食事を出しっぱなしにしておけば、犬はいつでも食べることができますから、肥満の原因になります。また、何度も食べることになるので、歯に歯石がつく機会も多くなります。回数は、生後3カ月までは1日4回、それ以降は2〜3回、1年以上になれば1日1〜2回が目安です。できれば、犬が食べている間、いつもと違う点がないかどうか、様子を観察するとよいでしょう。 早く食事をほしいとせがむ犬は、一般的に健康です。ただし、食欲が異常に亢進する病気もありますので、食べ方がふだんとあまりにも違う場合は、動物病院で診察してもらいましょう。犬にとって、食事は最大の楽しみのひとつです。飼い主さんが愛情を込めて、その管理をしてあげてください。 |