http://www.pet-hospital.org/
all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

猫白血病ウイルス(FeLV)について

どのような病気ですか?
猫白血病ウイルスに関係する主な症状の代表例
猫白血病ウイルスに関係する主な病気の代表例
猫白血病ウイルスの結果が陽性の場合
猫白血病ウイルス陰性の場合
猫白血病ウイルスのコントロールの方法について

■どのような病気ですか?
このウイルスは唾液、尿、涙液、母乳、血液そして胎盤を介して伝播します。空気伝播の感染はあまり多くなく、闘争による外傷(噛み傷)と口や鼻への直接の接触が最も多い感染源と思われます。なぜならこのウイルスは唾液に多く存在するからです。

このウイルスは世界中の猫に感染が認められています。特に外の猫は家猫より、感染率が高く、これが猫は家の中で飼育するよう薦める、ひとつの理由になっています。

年齢的には1〜6歳ぐらいの猫で、平均は3歳前後で一番発症率が高くなっています。

日本の猫は統計によると、約3〜5%がネコ白血病ウイルスを保有していると推定されています。そして病気の猫は、約15〜20%がネコ白血病ウイルスを保有していると推定されています。

猫白血病ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査をすることによってわかりますので、もし、検査を受けていない猫は、できるだけ早く検査を受けることをお勧めします。

現在では、この病気は予防接種によって、防ぐことができますので、予防接種をお勧めします。
■猫白血病ウイルスに関係する主な症状の代表例
・食欲不振や減退
・元気消失
・くしゃみ、鼻水、鼻詰り
・体重減少/悪疫質
・慢性的な発熱
・呼吸困難
・うまく歩けない
・下痢
・行動の変化/痴呆
・水を良く飲む
・再発性の皮膚病
・流産、死産
■猫白血病ウイルスに関係する主な病気の代表例
・リンパ肉腫/リンパ性白血病
・骨髄が関係する再生不良性貧血
・溶血性貧血
・難治性の口内炎
・繁殖障害(流産、死産)
・血小板減少症
・慢性進行性多発性関節炎
・糸球体腎炎
・ブドウ膜炎
■猫白血病ウイルスの結果が陽性の場合
猫白血病ウイルスが陽性と言っても、それは病気を示しているのではありません。それは、猫白血病ウイルスの保菌の猫と言うことです。しかし陽性の猫は、免疫(病気と戦う力)が低下しています。と言うことは、病気に罹りやすい状態になっていると言うことです。もし病気が発症すると、予後が非常に悪いことが多いのです。一般的に言うと、猫は2週間内外しか、生きることができなくなります。通常陽性の猫は、2〜3年以内に多くの場合、病気が発症しているようです。それゆえに陽性の猫は、三ヵ月ごとの血液の再検査が必要となります。最も注意すべき点としては、他の猫との直接の接触を避けることです。特に初回の陽性は、1ヶ月後に本当に陽性なのか確かめる必要があります。
■猫白血病ウイルス陰性の場合
3ヶ月以内の感染は、血液検査でも陰性と出ることがあります。できれば半年に1回の検査をお勧めいたします。少なくとも年に1回の検査は必要です。繰り返しますが、猫白血病ウイルスの最も重要点は、予防接種をすることです。

※現在の所、このネコ白血病ウイルスは猫科以外の動物、すなわち人や犬への感染は認められておりません。しかし公衆衛生上、新生児や免疫が重度に低下している人は、直接の接触は避けた方が無難だと思います。
■猫白血病ウイルスのコントロールの方法について
1.原因のウイルスとの接触を避けること
前記したように唾液、尿、涙液、母乳、血液からの感染ですので、これらの直接の接触を避けるようにします。そのためには、猫白血病ウイルスの陽性の猫との直接の接触を避けることです。猫が外に出て他の猫とケンカをし、もしその猫が白血病ウイルスを持って(約3〜6%)いれば、感染する機会が増大します。もしあなたが多数の猫を飼育していれば、その中に猫白血病ウイルスの陽性の猫がいれば、同じく感染する機会が増大します。

2.ウイルスの発生の機会を少なくすること
何よりも重要なのは、予防接種をすることでしょう。しかし現在の所、予防接種をすると、ある副作用に悩ませられる可能性もあります。猫が外にでれば、当然感染の機会が増加します。また多頭飼育の場合も、感染の機会が増加します。多頭飼育の場合は、定期的に検査をして、陽性と陰性の猫に分けて飼育する必要があります。また新しい猫を仲間に入れる場合は、一定期間隔離して、その間に検査をする必要があるでしょう。

3.ウイルスに負けない抵抗力をつけること
猫自身が健康で、丈夫であれば、たとえ猫白血病ウイルスの保菌猫に接触しても、その程度にもよりますが、かかりにくくなることがあります。なによりも、猫を定期的に検診して、各種の予防接種をしたりなどし、病気に罹りにくい体質にしましょう。

4.猫白血病の予防接種(ワクチン)を受けること
現在の猫白血病ウイルスの予防接種の問題点として、ワクチン誘発性の腫瘍(繊維肉腫)の問題があります。しかしこれは、1000頭〜10000頭に1頭の割合で起こるとされています。100頭に3〜5頭の割合で、猫白血病ウイルスに罹るとすれば、予防接種は、せざるを得ないでしょう。世界各国の獣医師は、早くワクチン製造メーカーに、腫瘍を誘発しない製剤を作るよう、要請しております。各メーカーも競い合って開発に力をそそいでいるようです。しかしながら、この問題は、獣医師と猫の飼い主の方の協力によって、ほとんどが防ぐことができます。重要なことは、予防接種後に、その接種した部位がどうなっているかです。硬く硬結していないか?その部位が腫れてきていないか?等注意深く見守る必要があります。