1. 飲水に混ぜての投与 |
多数の鳥に対して、鳥をつかまえなくても投与できたり、用意が簡単であるが、鳥はその水を飲まなかったり、飲水量がはっきりしなかったり、飲んでいるかを調べる必要がある。大型鳥への投薬や、予防的健康管理薬の投与に対しては、よい方法と思われる。 |
2. 滴下投与 |
飲水中の投与より一歩進んだ方法であるが、飲み込むことを拒絶する鳥や(薬剤が無駄になる)、速く投与すると誤嚥性肺炎になったりすることもあるので、多くの場合、鳥をつかまえる必要がある。しかし投与が簡単で、注射法ほど正確な薬用量を必要とせず、消化器系の感染などに適する投与法である。プラスチック製のスポイトなどを用い、ガラス製のものは用いない。 |
3. チューブ(挿管)投与 |
もっともよく用いられる投与法で、翼状針のポリエチレンチューブの部分を用いたり、16ゲ一ジぐらいの大きさの、3〜4cmの長さの針の先端を切って鈍にして用いたりする。大型鳥においては、比較的太いチューブを使用しないと気管に入ることがあり、一度吸引することや、触診でよく確かめることなどが、必要である。その鳥の投与量を超えない量で投与する。
・セキセイインコ 1ml
・カナリア 0.25ml
・文鳥 0.1〜0.5ml
・オカメインコ 2〜4ml
・中型オウム 10〜15ml
・大型オウム 20ml |
4. 薬剤貼付食 |
まとめて多数の鳥に投与でき、つかまえたりのストレスがないが、摂取した薬剤量を決められないし、食べるかどうか調べたり、薬剤が貼付された殻が無駄になったりする。しかしながら、予防的健康管理薬などの投与にはとても便利な方法である。最も多く使用される薬剤は、エビオス末:ビオフェルミン末:カルシウム末(BPDかデーカル)を6:3:1ぐらいの割合で混和し、それをカラ付やむき出の入った餌入れに入れて、よく混和して常時それを投与します。余った薬は瓶の下の方にたまります。
餌の管理で重要なことは、その餌を使い終わるまで、その保存用の餌入れに新たな餌を入れないことで、使い終わらないうちに入れるといつも下の方は古い餌が残ってしまうので、変質してくるからです。もちろん虫などの発生に注意します。
また別の薬剤貼付剤として重要なものに、オウム病を人間から守るためのものであって、米国では輸入される鳥には、少なくとも45日間テトラサイクリンの投与が行われているが、我が国においては、毎年約300万羽の鳥が輸入されているが、ほとんどフリーパスの状態で輸入されている。米国ではテトラサイクリン入りのキビが発売されているが我が国にはない。そこでわが国では家庭でオウム病の予防を行う必要がある。
その方法は、小児用レダマイシン、ドライシロップ(武田薬品)、1包(1g中テトラサイクリン60mg含有)に対しエビオス末5gをよく混和して、それを皮付き餌120gとよく混和して同じように45日間以上投与するとよい。また水30mlに対して1/2包(30mg)を溶かして同じように与えることができる。 |
5. 筋肉注射法 |
筋肉注射はもっとも確実な方法で、薬剤が投与され、好んで行われる方法である。注射部位は胸筋に行われ、正確な投与量を決めるため体重を測る必要がある。注射器はマイクロリッター注射器がベストであろうが、高価な点や壊れやすいので、通常我々は我が国で入手できる最小単位の1ml用デスポーサブル注射器を使用している。
お推めできるものには、モノジェクトの結核用1.00cc用のもので、これは0.01ccの目盛から成り、0.1ccずつ10の単位に分かれている。またテルモのインシュリン用1ml/40単位のものでもよく、これは目盛が0.025mlから成っている。いずれの注射器も、針は変える必要がある。テルモ26G1/2、0.45×13o、SBのものが最適で、これは針先がショートカットとなっており、他の25〜26Gのものは針先の点で難点がある。
針はできるだけ常に新しいものに変えることが必要で、鈍となったものは鳥に損傷を与えることがある。注射するにあたっては、あらかじめアル綿にて毛を分けて部位をよく確かめて、確実に筋肉に投与する。あまり深く刺すと危険である。注射部位から失血がないかをよく確かめ、綿で10秒間ぐらい押える。注射は死んだ鳥などに、墨汁注射を行って筋肉のどの部位に注入されたかなどを調べるかして、あらかじめよく練習しておくとよい。 |
6. 皮下注射法 |
鳥が衰弱して水を飲めないときや、外科手術の前に水分供給をはかるために用いられる。普通、腋窩部分に5%ブドウ糖、乳酸リンゲルなどを投与するが、頸部皮膚、鼠径部にもできる。皮膚は弾力がないから、注入しても押し戻されてしまうことがある。セキセイインコなどでは両腋窩部に0.4mlぐらいずつ入れることができる。 |
7. 洞内注射法(副鼻腔内注射法) |
眼窩の下の洞内に注入して洗浄するために用いられ、慣性洞炎などのときに、ときどき行なわれる方法で、生食でうすめた抗生物質などを投与する。
鳥の頭をしっかりと固定し、アル綿で口角の部分をきれいに拭いてやると、穿刺部位である羽毛のない三角域が現れる。この域の中心の少し上部をボールペンで軽く押すとへこむ部分があり、穿刺部位である。あまり鋭くない針を、洞内に2mm以下の深さで注入する。余分な液体は鼻孔から出てくる。両側から出れば、他側の注入は必要がない。あまり暴れる鳥に対しては危険で、麻酔が必要になってくる場合もある。 |
8. 鼻腔内注入 |
軽い洞炎などの場合、鼻孔を閉鎖しないように粘調度の低いものを用いる。ゲンタマイシンの点眼用の液体(1cc、3mg含有)が最適で、特に燕雀目の鳥には使い易く、鼻に1〜2滴たらすだけでよい。 |
9. 眼剤(局所薬) |
軟膏は第3眼瞼があるためか、ベトつくので適用しにくい。抗生物質、ステロイド等がほんの少量適用されるが、何回も投与する必要がある。 |
10. ネブライザー |
呼吸器疾患に適用される。空気のもれない所に蒸気を充満させて、その中に鳥を入れておく。普通は保育器にて行うことができるが、温度が高くなりすぎないよう注意する。普通治療は7日間連続して行う。
通常使用される薬剤として、ガンタマイシン(エッセクス日本)40mgのものを5ml、生食15mlに溶媒して、吸入用薬剤アレベール(日本商事)を1滴用いて、45〜60分間ぐらい使用する。
その他使用できる薬剤として、カナマイシン、クロラムフェニコール、サルファジメトキシンがあり生食15mlに対し、200mgの量で使用する。 |
11. その他の投薬法 |
静脈注射は救急用の手段でセキセイインコの場合、翼上腕静脈に5%ブドウ糖1mlをゆっくり1日2回静注(27G使用)する。より重篤な鳥には、ソルコーテフ(100mg)、0.01mlが加えられる。静脈注射には血腫が起こりやすいので注意する。
腹腔内注射は、気嚢があるため禁忌である。結膜内注射は結膜炎のときにまれに行うことがある。局所薬は通常、エリザベスカラーが必要である。 |