a. |
そ嚢の手術を除いて、絶食はしない。鳥は血糖値が高いので、そのため代謝率が高く、絶食をすれば肝のグリコーゲンや解毒の作用が低下するからである。 |
b. |
麻酔中も回復期も鳥を暖かくしてやる。ヒーティングバックパットまたは補助ライト等を使用して、体温の低下を防ぐ。鳥は高体温下のみで正常な代謝が営まれるので、体温の低下は死を意味する。 |
c. |
麻酔はできるだけ軽い麻酔、すなわちナルコーシスの状態に保つことを心がけるが、これはしばしば困難を伴うことがある。そのため手術の覆い布は透明なものを使用したりして、常に呼吸やその動きが観察できるようにする。 |
d. |
麻酔の前または術中にできうれば、血液のデータを得ることが重要である。鳥は貧血や脱水に対して判定することが困難な場合があるが、PCVが55%以上であれば、脱水を示しており、20%以下であれば重度な貧血を示している。血糖値が200r/100ml以下であれば5%ブドウ糖を投与してやる。 |
e. |
手術をする前に、あらかじめ輸液などをすることは、循環器障害や脱水を防止するためにも行なうべきである。また術中においてもセキセイインコなどの場合に、15分おきに0.1mlずつ乳酸化リンゲルを場所を変えて筋注することも有効と思われる。 |
f. |
できればアトロピンを導入5分前に、原液10倍希釈液を正確に、0.03mlの割合で投与し、分泌液の流出を減少させるとよいであろう。またそ嚢の液体はできるかぎり、綿棒などで除去しておく。 |
g. |
局所麻酔は感覚の鋭い部位、頭部、脚、関節、肛門(これらの部分は刺激に対して、反応がよいので麻酔のモニターに使用される)などの部位に用いられるが、鳥類は特にブロカインに対して毒性があるので、もし使用するとしても希釈した0.20%プロカインを用いるべきである。通常大型鳥に用いられ、小型鳥においてはプロカインは禁忌とされている。 |
h. |
吸入麻酔剤のフローセンが最も安全と思われる。通常マスクなどで導入されるが、大型鳥などは籠ごとビニール袋などで覆い導入することもできるが、そのような閉鎮した方法は危険でもある。我々はシャーウッドのディスポーサブルシリンジの外筒を改良して使用し、よい結果を得ている。大型の鳥なら気管内挿管はやさしいが、小型鳥にはちょっとした改良が必要である。しかしながらこの操作で鳥が輿奮するようなら有害である。特に小型な鳥などにおいては、挿管時の麻酔の濃度の変化には注意を保ち、酸素の量と共に、正確な液量がコントロールできる気化器を使用する必要がある。もし可能であれば大型の鳥の場合はできるだけ挿管することがよい結果を生むと思われる。 |
i. |
回復期には、鳥が傷つかない環境が必要で、鳥を暖かくし明るくしておくと回復は早い。我々は回復しにくい小鳥に対しては、ストッキネット(東京衛材)を使用して、頭を除いて全身をその中に入れて保定している。 |
j. |
鳥は絶食させないので麻酔中、麻酔後に嘔吐、逆流など誤嚥性肺炎の原因となりうることがおこるようであれば、柔軟なチューブを導入後に食道に挿入してやればよい。液体の逆流はこの管の内腔を通って外に出る。またこれらのチューブは麻酔中にも応用できるものである。 |