三鷹獣医科グループでの一般医療についての御案内
三鷹獣医科グループでの一般医療について
あなたの動物が、医学の恩恵を最大限に受けるためには、動物病院を少なくても2-3箇所を確保しておく必要があります。すなわち「一般医療」と「専門医療」、それに「緊急医療(夜間の救急救命医療のできる夜間病院、理想的には24時間の動物病院)」の各々の動物病院です。通常は「一般医療」と「専門医療」の動物病院をうまく使い分けることが必要だと思われます。お勧めは、犬猫が7歳になるまでは2-3年に一度は、「専門医療の動物病院」で健康診断を兼ねて診察してもらい、通常の予防的処置は「一般医療の動物病院」で年に2-3回処置をしてもらうという方法です。専門医療には、病気でない状態でも、病気がちな場合、症状が重たそうな場合、通常の治療で治らない場合も含まれます。
もし7歳以上(大型犬は5歳から)であれば、年に一度は「専門医療の動物病院」に行くことをお勧めします。
要するに、動物医療においても、並行して2-3件の病院を利用することで、あなたの動物はより医療の恩恵を受けることができるということです。人間の医療で1つの病院のみで医療が終わることがないのと同様です。
動物病院における一般医療とは何でしょうか?
一般医療とは、より分かりやすく言えば、動物の健康に関する事柄をより幅広く、飼育から日常の健康管理まで取り扱うことで、主には病気の予防や、健康維持のための処置、及び通常の病気の診断と治療を行うことができる動物病院と説明できるでしょう。それでもその約80-90%以上の病気の症状はそれなりに通常問題なく抑えられますが、合併症の有無、併発疾患(症状はまだだが潜んでいる病気)、予後の判定、老化(加齢、高齢)と病気の違いの判定等は難しくなります。
各々の臓器の病気や特殊な病気に対しては、それぞれの専門医療の、その病気に詳しい獣医師に診断と治療を委託します。例えば嘔吐する犬猫の診断名は約200種類あり、「ただ単にストレス?胃炎?でしょう」では、すまされないからです。
一般的に言うと、この一般医療で扱える病気は、すべての動物の病気の約80〜90%でほとんど検査等が必要なく、「単兆候性」の病気、すなわち「病気である異常所見が一つのみ」の場合を指します。
具体的に言うと、「『嘔吐』はあるが、いつものように元気で、食欲もあり、熱もない」という場合で、一つの異常(嘔吐)はあるが他の所見はあまりない、という場合が「単兆候性」であり、通常は治療のみで治まります。
しかし、「『嘔吐』があり、少し元気もなく、食欲もない、しかも高齢等の要因がある」となりますと、これは「多兆候性」に分類され、徹底的に検査し、病名を調べないと命にかかわる場合があります。
一般医療は、主に症状に対して推定する大まかな幾つかの病状や時に病名に対して、主には対症療法を中心に治療を行うもの(判る場合は原因療法を行う)と説明できるでしょう。
すなわち「原因療法」を行わない、病名を断定しなくても、「対症療法(支持療法)」で病気が治まる場合を言います。
しかし同じ症状が何度かくりかえされる場合には専門医療を受ける方が無難です。 現代の医療は病名によって治療をおこないます。軽い病気は病名なしでも治療が受けられます。
一般医療は日本の標準的な平均値の医療レベルと思われます。特に予防的な処置を行うのに適していると言えるでしょう。例えば、予防接種等の予防医療は特にそう言えます。
しかし病気の5〜10%にに当たる疾患は、専門医療でないと、対処できない病気、すなわち比較的めずらしい病気や、診断がむずかしい病気(特殊な知識や技法や特別な医療器械が必要)なのです。まして、それらの合併症やその病気の程度の判定等の評価はむずかしいのです。
一般医療は、例えば心不全、腎不全、貧血というカテゴリーで、病名として診断して治療することが多いようですが、専門医療的に言えば、心不全とか腎不全、貧血は病名ではなく、単なる状態を示しているだけです。
心不全とは、心臓病を持ちその症状が発現している状態を示しているのです。同じように腎不全は、腎臓病を持ちその症状が発現している状態、貧血とは、血液が不足している状態であると言っているのです。ゆえにあなたの猫が慢性腎不全と言われたら、「腎臓がいつも悪い」 というだけで、問題である「どのような原因で慢性状態の腎臓の病気になったのか」は「分かりません」と言われていることになります 。
問題はいかに「専門医療」を受けるべき、この10〜20%に当たる疾患かを判定することです。
例えば、7歳以上の犬で癲癇発作が初めて認められれば、脳腫瘍を疑い、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴 画像装置)で診断するといった手順になります。
この場合は特殊な医療器具を使用してはいますが比較的わかりやすいのですが、より複雑化した特殊知識や技法の必要な場合は、更に難易度が高くなります。
これらの解決のための手段はひとつではありません。
セカンド・オピニオン(第二の医師の意見を聞く)を利用することもひとつです。
古典的には、担当する獣医師に他の手段が存在するのか?より専門的な医療を受けた場合に違いがあるか?などの意見を聞くことが重要です。
専門医療では各々の病気に対して特殊な診断機器を使用し、それらのもつ特殊な専門知識と技法によって、対処できる場合が多くあると思われます。
文責:日本動物病院福祉協会認定の内科認定医 小宮山典寛より