http://www.pet-hospital.org/

all words by Dr.NORIHIRO KOMIYAMA

猫の慢性腎不全
2001/8/24 第1回改訂

猫の慢性腎不全は、猫が高齢になると最も発症しやすい病気といわれています。いずれ4頭に1頭の猫は、高齢なるとこの病気を発症します。だいたいの推計によると、
年齢 発症率
8歳前後
10歳前後
12歳前後
15歳前後
約8%
約10%
約15%
約25%
発症していると推定されます。この病気の最も難しいところは、なかなか症状がつかみにくいことです、というのもなかなか明らかな症状が表れないからです、唯一の症状といわれるものは、体重の減少と、食欲が減少するということです。しかし大体の猫が、高齢になると体重が減少したり、食欲が落ちる、と思われがちなので、病気との鑑別が難しくなるのです。ですから高齢の猫は、毎月の体重の測定をお奨めします。

猫の慢性腎不全の症状は?
・食欲不振
・よく眠るようになる
・体重の減少
・水を良く飲む
・多飲多尿
・貧血
・傷が治りにくい
・嘔吐をする
このなかで比較的わかりやすいのは、 多飲と多尿で注意して観察すると、わかるものです。しかし、これも数年前の水の飲み方と比較してとのことですので、わかりにくいことがあります。また猫は尿の濃縮があるので、犬ほどこの症状がでません。またこの水の飲み方も、年齢とともに徐々に増してくる他の病気との合併症で、やはりわかりにくいことが多いのです。

また病気がかなり進んでくると、貧血という症状も現れてきます。その他の症状は、時々嘔吐することが多いということです。獣医師の診断によると、腎臓の大きさが小さくなっていることが多いのです、また多くの猫は、脱水(水分が不足)をしています。貧血は、血液が作られないタイプの貧血、すなわち非再生性貧血が認められます。

また最近の知見として認められることは、多くの猫が高血圧状態になっているということです。またある猫は、消化管の出血が認められる場合もあります。嘔吐の原因は、尿毒症からくるものです。それが原因で、猫は元気がなくなる状態となるのです。また口の中に潰瘍ができることもあります。

慢性腎不全の状態を、最も把握する良い指標としては、臨床症状と腎臓の検査です。慢性腎不全という病気の問題は、ある程度まで進行しないと症状が、表れないということです。だいたい病気の進行が70-80%くらいまで進行しないと症状が表れてこないのです。このことがこの病気を評価する上で最も重要となります。

また慢性腎不全といっても、どんなタイプの慢性腎不全かが問題となります。すなわちその原因の判定が重要です。間質性腎炎・腎盂腎炎・糸球体腎炎・水腎症・腎嚢胞・アミロイド症・腎毒素・腎リンパ腫等いろいろあります。問題はこれらのなかから、どれか?ということです。

これらの鑑別には、触診やX線撮影検査を始めとして、通常は超音波検査が必要となります。最終的には腎臓の一部を採って調べる検査(生検)が必要となることがあります。

飼い主の方ができる慢性腎不全の看護法
1)できるだけリラックスする環境をつくる
2)新鮮な水を、いつでも切らさないようにする
3)十分な、睡眠と休息の時間を作ること
4)できるだけストレスのかからない環境をつくる
5)食事はできるだけ、猫の慢性腎不全用の特別食を与えること
6)市販の食事の場合は、高齢食を選ぶこと
7)不必要に、多くのたんぱく質を与えないこと
8)トイレは普段慣れた、使いやすいものを使用すること
9)市販の人間用の、ビタミン剤等は通常使用できる
10)毎日できるだけ、ブラシングを行うこと
できれば在宅療法を併用するとより効果的です。

この方法は、良い治療効果を発します。残念ながら、現在ではあまりこの方法を採用している動物病院は少ないようです。この在宅療法とは、自分の猫に、輸液等の治療を行うことです。とにかく慢性腎不全の猫に1番必要なものは、水分です。これらの水分の補給には注射で与えるのが最も正確です。ですから飼い主の方が毎日、何回かに分けて自分の猫に皮下注射を行うものです。その方法については、指導を受けてください。

すべての飼い主の方に、行えるとは限りませんが、もし行えば確かに有効な方法です。特に重度な慢性腎不全の場合には、毎日病院に行って治療を受けるのはとても大変なことです。そんな場合に、これらの自宅による輸液療法を行うと多くの場合猫の寿命が伸びます。

欠点としては、誰かがこの方法を行わなければならないということです。しかしこの方法を採用すれば、治療費においてもかなり削減されるはずです。しかし定期的に動物病院に行って、現在のやり方で良いかは、指導を受けなければなりません。